製造業へ

以前から少しづつ、学習塾業界に対する将来性の不安を感じていました。かといって30代半ばのいいトシのおっさんが、全く未経験の業界へ転身するには迷いがありました。


3つ目の学習塾で経営者と衝突しモメたことで、キッパリと転身する決心がつきました。

当時の塾経営者に対しては、人生の敵だと思いましたが、この転身を後押ししてくれたと思うと、恩人でもあります。人生ってそういうもんです。

どんなに不幸に思えることが思っても、それは人生のその時に必要なことが必然的に起こったもの。自分の潜在意識がそう望んで起こしているもの。




そう言われています。感謝。

百聞は一見にしかず、百見は・・

次の仕事は製造業。全くの未経験からのチャレンジをするにはトシいってますが、モメたことで踏ん切りもつき、次の職場も見つかりました。自動車関連の製造でした。環境も変えてゼロからやり直すということで、それまで住んでいたアパートも引っ越し、実家に戻りました。



どんな業界でもそうですが、やってみて初めて分かることってありますね。

世界トップクラスの巨大自動車メーカー、その下請け、孫請け、の実態を身をもって知ることができました。本やネットの情報では分からない、現場の空気を身をもって味わうことができました。これもこの時の私の人生に必要なことだったのでしょう。

ハードな仕事でした。こういう人たちが何万人、何十万人といて、その上に巨大自動車メーカーの栄光があるんです。



ある程度規模の大きい、一次下請け、二次下請けならそんなことはないのでしょうが、規模の小さい孫請け、ひ孫受けともなると、ジャイアンにいじめられるのび太くんみたいなものです。しかも助けてくれるドラえもんはいないという・・・。

エピソード①取引先にて

入社して数ヶ月で品質管理の部署に異動になり、ある日「某取引先まで行ってきてくれ、詳しいことは取引先に聞いてくれ」と言われて、行ってきました。

行くと、取引先の担当者は既に大激怒。到着するなり、挨拶もそこそこに

「お前んとこはどうなっとるんだ!」


こちらは全く訳がわかりません。どうやらこちらが納めた品物に品質不具合があり、そのせいで怒っているようです。

製造の仕組みはどうなっているのか、誰が検査しているのか、教育はどうなっているのか、矢継ぎ早の質問がきましたが、入社して数ヶ月、まともな研修も受けていない新人に答えられる訳がありません。(驚くべきことに、新入社員に研修するという仕組みは全くありませんでした。)




ひたすら謝り続け、納めた品物はその場でもう一度全数検査し、何とか解放されて帰社した後、上司に

「どういうこと?」

と問うたのは言うまでもありません。





何か問題が起こってから、後手後手に対応する社風でした。次のエピソードとも関係しますが、日本人よりも外国人が多い職場ということもあり、日本語で微妙なやり取りができる日本人の新人は、あちこちに尻拭いに行くのが普通でした。

エピソード②不法入国、不法就労

ある日、仕事をしながらふと外を見ると、異様な光景が広がっていました。




なんと、人垣が壁のようになって会社を取り囲んでいます。
何?何?と思っていると、ビシッとスーツを着た2人組が事務所受付に現れ、

「入国管理局です」

なんと、不法滞在、不法就労の外国人の摘発に来たので下。外を壁のように取り囲む人垣は、強制送還を恐れた外国人労働者が逃走するのを防ぐためのものでした。



現場で働く外国人は、正社員ではなく派遣社員として働く外国人が多いため、彼ら彼女らの身分は私たちには分かりません。(もしかしたら偉い人たちには分かっていたかもしれませんが。)

一緒に仕事し、何度も会話し、顔も知った派遣外国人たちは次々と、2人がかりで両腕を抱えられ、何処かへ連れて行かれました。そして2度と会うことはありませんでした。

外国人たちの年齢は知りませんでしたが、どう見ても、若い人はまだ10代でした。普通の日本の若者よりしっかりとした考え方を持っていました。お金のためという事もありますが、残業も厭わず頑張っていました。

よくニュースでは外国人研修生の実態をおどろおどろしく紹介しているものもありますが、この時の勤務先ではそういうことは全然なく、みんな明るく楽しく働いていました。




不法滞在はルール違反なので仕方ありませんが、どうにもならなかったのかなぁと思っています。
みんな、どうしているかなぁ。

エピソード③突然やってくる

ある日の午後、今日の残業は何時間で片付くかなぁなんて思っていた頃(残業4時間程度なら、あぁ今日は早く終わったなぁ!という意識でした)取引先に行っていた上司から同僚に連絡があり、今すぐ人数かき集めてきてくれ、とのこと。


こういう時ってたいてい選別(取引先まで流出してしまった不具合を、再度全数検査するという、しんどい不具合対応)なので、嫌な予感がしました。

詳しい情報は同僚までは伝わっていましたが、自分は何も知らされないまま、いいから来てくれと連れて行かれました。

連れて行かれた先は、高速に乗って1時間以上かかる取引先。到着した頃はもうすっかり日も暮れ、暗くなっていました。

そこから説明を受けて全数検査、不具合の修正をし、会社に戻ってきた頃は深夜0時ごろでした。



疲れきって帰宅しましたが、翌日は普通に朝から仕事です。

今ならコンプライアンスで問題になります。労働基準監督署が査察にやってくることになるはずなので、こんなことはないかと思います。

そんな現状に対し、周りの他の社員たちは文句を言いながらも普通に仕事していました。この業界の中だけで生活してきた人は、これが当たり前になっているのでしょう。

他の業界から転職してきた私には、ものすごく違和感を感じました。ふと、このまま勤務していたら死ぬかも、という思いが頭をよぎりました。

前回のお話

さよなら教育業界

学習塾業界から足を洗って(なんて失礼な表現だろう)安定した業界に転身した方がいいと思いつつ、とりあえず目の前の経済的事情により、手っ取り早く職にありつける学習…

続きのお話

ペン画のプロへ

学習塾業界の先行きに不安を感じ、製造業へ転身したものの、なかなかうまくはいきません。取引先からひっきりなしにやってくる不具合の対応に振り回される毎日でした。し…

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