【ペン画】屋根瓦の描き方
整然と並べられた屋根瓦。キレイに描くことができたら、カッコイイですね。


- キレイに描きたいけど、大変そう。
- 描いてみたけど、上手くいかなかった。
- 目がチカチカしてくる。
そんな声が聞こえてきそうですね。
この記事では、私が屋根瓦を描くときに採用している方法を紹介します。
実を言うと、私もまだまだ試行錯誤の最中です。ですが、個展にたまたま訪れてくださった瓦職人の方が
「こんな正確に描いている屋根瓦は見たことがない」
と言ってくださりました。
是非参考にしていただき、楽してキレイに描ける方法を一緒に研究しましょう。
瓦の種類
一口に瓦と言っても、いろいろな種類があります。
最も一般的なものは和瓦と呼ばれています。J型とも呼ばれています。
自然なカーブがついていて、整然と並べられたその姿は美しいですね。
和瓦よりもさらにカーブが大きいのが、スパニッシュ瓦です。S型とも呼ばれています。
南欧風の建築物に似合います。
寺社でよく見られるのが、本葺き瓦です。
立派ですね。
カーブのない、平板瓦と呼ばれるものもあります。F型とも呼ばれています。
屋根が広く見えます。
描くときに一番手間も時間もかかるのが、和瓦(J型)です。
続いて二番目はスパニッシュ瓦(S型)です。
本葺き瓦は見た目が立派なため難しそうに見えますが、そんなに難しくはありません。
一番描きやすいのは平板瓦(F型)です。
今回は一番難しい和瓦(J型)に挑戦してみたいと思います。
題材はこちらにします。

旧東海道藤川宿には観光客のための駐車場があり、そこにあるトイレです。かなり小さい建物です。
屋根が大きくなればなる程、難易度が上がります。初心者の方は、なるべく小さいサイズの屋根からやってみることをオススメします。
描き方の流れ
パースを意識する
建築物や風景に立体感・空間を表現したいときよく使われるのがパースです。、一点透視、二点透視といった図法があります。
二点透視
瓦の1枚1枚は形の狂いは目立ちにくいですが、瓦がたくさん集合した屋根はいくつかのパースが組み合わさっていて、パースが少しでも狂っていると不自然な仕上がりになります。
屋根瓦のパース①

横方向のパースです。遠いものは小さく見え、近いものは大きく見えます。そのため、奥(画像左側)は狭く、手前(画像右側)は広くなります。また上の方は狭く、下の方は広くなります。
屋根瓦のパース②

縦方向のパースです。これも奥(画像左側)と手前(画像右)でパースがあり、また上と下でもパースがあります。
屋根瓦のパース③

パース①の2つのパースと、パース②の2つのパースが狂いなく正確に表現できると、パース③が生まれます。このとき①か②のどこかに狂いがあると、③は狂ってしまいます。
また見る向きや屋根の大きさにもよりますが、パース④や⑤、⑥・・・と続いていくこともあります。
下書きで全てが決まる
全てのペン画は下書きが全てだ、というわけではありません。
下書きなしでいきなりペンで描き始め、すごい作品に仕上げるペン画家もいらっしゃいます。ただ私はそういう描き方はしません。(できません・・・)
木や石といった自然なモチーフや、モチーフでなくイメージを表現する場合は、そういう描き方が向いていたりします。ビンやコップのような人工物は、形が決まっているため、形の狂いが目立ちます。
屋根瓦の場合、パースが狂っているとすぐに分かってしまいます。下書きは欠かせません。
下書きで完成度が決まってしまうのです。
実物や写真を参考に、4B程度の柔らかい鉛筆で下書きを始めましょう。しかし、瓦の一枚一枚は細かいです。そのまま描いていては時間も手間もかかります。
全て描いた後、ズレがあったため最初から描き直し、では悲しいですね。
時間短縮・効率化のために私は、ガイド線を事前に引きます。
元画像にも同じようにガイド線を引きます。
私は資料を画面に表示して描いているため、画像編集ソフトのガイド線を使っています。
印刷したものにペンで線を引いてもいいでしょう。色のついたペン(赤ペンなど)が見やすくていいですね。
ガイド線をもとに、まずは建物の全体像を下書きします。
軒先の丸いところ(軒瓦)を配置していきます。
手前側は間隔が広く、奥側は間隔が狭くなっています。これをきちんと描くことで、自然な遠近感を表現することができます。
柱や屋根の線をまっすぐ引くため、定規を使います。
定規を使うか使わないかは賛否ありますが、私は時間短縮のため下書きの段階では使用することが多いです。
ただしペン入れ段階では使用しません。定規を使った線というのはあまりにも真っ直ぐ過ぎて、味とか風味が全くないからです。
定規を使わない線の微妙なゆがみ・ふるえ・誤差は、手描きならではの味・風味であり、それが嫌な場合は手描きでなくデジタルツールを使う方が効率的です。
軒瓦を起点として、瓦の凸部にガイド線を引きます。画像の赤線部
です。
さらにこの線を起点にして、瓦のカーブを描きます。
瓦凸部のガイド線(赤線)と実際の瓦の凸部(緑線)はずれているので、一枚一枚修正します。ただ、この程度の作業でしたら、ペン入れ段階でやっていただいても問題ないでしょう。
下書き完成です。
今回は瓦屋根の手順を紹介するのが目的のため、屋根の部分以外は大胆に省略しています。
パースがキレイに表現できるかどうかは、全て下描き段階で決まります。ここで形が狂っていると、ペン入れ段階で修正することはかなり難しくなります。面倒ですが、もう一度やり直した方が良いでしょう。
ペン入れ
今回はこちらのペンを使用します。
STAEDTLER社のpigment linerです。0.05と0.1を使い分けながら描いていきます。
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価格:231円 |
どこからペンを入れますか?とよく聞かれます。特に決まりはなく、描きたいところから描きましょう。
私はいつも黒の濃いところ、目立つところから描くことが多いです。
ひとまず完成!
本来なら、屋根以外の部分である柱や壁・地面の影をもっと描き込むのですが、今回は屋根の描き方の紹介なのでこの程度にしておきます。
どこまで描く?
瓦を描くときは、まず瓦と瓦の境目の部分を線で描き、
その後、影の部分を面で描いています。
では、瓦上面のうねっている面は、どうしましょう?
うねっている面は、光の当たり方によって、少し影ができます。上の画像の「やや影」がそうです。
実は今回「やや影」の部分も「明部」の部分もペンの描き込みはしていません。「影部」だけです。
本来ならこの微妙な陰影はきちんと表現したいところですが「道具の限界」というものがあります。
もっと分かりやすくいうと、ミリペンが太すぎて黒くなりすぎてしまうのです。やや影になりません。
今回はSTAEDTLER社のpigment liner 0.05 という、数あるミリペンの中でもかなり細いものを使っていますが、それでも太すぎます。
他のメーカーのミリペンなら0.03まで細いものがありますが、それを使っても同様です。
紙の白を残したくない、もっと描き込みたい、完成度を上げたい、そんなときは以下の方法を試してみてください。
- 紙のサイズを大きくすることで、相対的にミリペンのサイズを小さくする。
- ペン色を黒でなく、薄いグレーにする。
- もっと細いペン(丸ペンなどのつけペン)を使う。
ペン画というものは、描き込みのバランスが大切です。描き込み不足では完成度が下がりますが、描き込みすぎても残念な仕上がりになります。
そのあたり、ペン画は油絵やアクリルとは違い、透明水彩に近いとも言えます。紙の白を上手に残しながら、完成度の高い作品を目指しましょう。
まとめ
いかがでしたか?
今回の内容をまとめると、屋根の描き方は
- パースに気をつけて下書きをきっちり描く。
- ガイド線や定規を活用して下書きを正確にする。
- ペン入れは描き込みのバランスを意識する。
です。
屋根瓦を描くのは大変で心が折れそうになることもありますが、そのぶんキレイに仕上がった時の充実感も大きいです。ぜひチャレンジして、一緒にその充実感を味わいましょう。