【基礎】ガラスのコップの描き方のコツ 3選
円柱、立方体、球といった基本図形を練習するのは大切ですが、実際のモチーフも描きたくなるものです。今回はガラスのコップを描いてみましょう。
初心者の方は、透明なガラスを絵に描くというだけで困ってしまいます。色もないし、向こう側が透けているし、絵に描けない・・・と、私も初心者の頃は思っていました。
またある程度描けるようになってきた方でも、硬質なガラスの質感を表現するのに困っている方も多いです。
この記事では、透明なガラスのコップを描く際のコツを紹介します。最後までご覧いただき、描き上がった後の充実感をみなさんで分かち合いましょう。
Contents
透明なガラスを描くコツ
透明なガラスの質感を描くには、3つのコツがあります。
- 透けている向こう側を描く。
- 映り込みを描く。
- 明暗をしっかり見る。
ひとつづつ、確認していきましょう。
コツ1.透けている向こう側を描く
美大・芸大受験の頃、通っていた教室で先生によく言われたのが、
「ガラスの向こう側を描け」
でした。ガラスのコップを描く場合、こちら側の側面と、向こう側に回り込んでいる側面を描く必要があります。
「そんなこと言っても、こちら側も向こう側も透けて重なっているんだから、両方同時に描いてしまうじゃないか。」と受験生当時の私は思いました。
当時の状況はこんな感じです。
大丈夫です。描き分けられます。
心の中で「今はこちら側を描いている」「今は向こう側を描いている」と強く意識してください。こちら側を描くときのペンや鉛筆の方向と、向こう側を描くときの方向を意識して使い分けることで、こちら側と向こう側を描き分けることになり、透明な質感を表現できます。
コツ2.映り込みを描く
ガラスの表面には、室内の風景が映り込みます。天井の照明、窓ガラス、棚、石膏像、描いている自分・・・
照明は明るいので、キラリと光るハイライトにもなります。
当然、ガラスの曲面に沿って歪みます。歪んだ状態で描き込むことで、ガラスの質感が表現できます。
コツ3.明暗をしっかり見る
ガラスは透明なので、コップ全体での陰影を感じ取りにくいのですが、きちんと明暗があります。透明ではない円柱なら、わかりやすいですね。光源の反対側は暗くなります。
透明なガラスのコップも同様、暗い部分と明るい部分があります。この全体的な明暗は、透明なガラスでは見えにくいので、頭の中で「ここから光が差し込んでいるから、こちら側は暗くなるはずだ」と理論的に考えながら進めていく方が効率は良いです。理論的な考え方が苦手な人は、基本図形「円柱、立方体、球」の練習を積み重ねておきましょう。
円柱の描き方の詳細は以下の記事をご覧ください。
全体的な明暗だけでなく、細部の明暗もあります。細部の明暗は分かりやすいです。
キラリと光を反射しているハイライト部は、描き込むことはせずしっかりと紙の白を残し、その周りを暗くします。
コップの底や飲み口には、光の屈折の関係で光が届かない部分があります。そこはかなり暗くなるので、しっかり黒く表現します。
明るいところと暗いところがはっきりしているので、しっかり描き分けることで、一気にガラスらしくなります。
では実際に、ガラスのコップを描いてみましょう。
ガラスのコップを描いてみる
どんなコップがいいか?と迷う方もいるかと思いますが、初心者の方はなるべく装飾の少ない、100均等で購入できるものが良いでしょう。
スマホで撮影すると、実物よりも遠近感が強調されているような気がします。
装飾があってキラキラしたコップは描きごたえがありますし、出来上がった時の見栄えもいいのですが、難易度も高く描く途中で挫折する可能性もあります。
1.手に持つ
ガラスのコップに限らず全てそうですが、手に取って見ることができるものは、実際に手に取ってじっくり観察しましょう。手触り、滑らかさ、重さなど、見るだけでは分かりにくい情報がよく分かります。
他にも見るポイントは、
- 飲み口の形状
- 底からの立ち上がりの形状
- ガラスの厚み
など、触りながら確認しましょう。
2.形をとる
形の取り方は「基本図形・円柱」と同じです。基準線をしっかり引いて、楕円の形の違いに気をつけて形をとりましょう。
詳細はこちらの記事にあります。
3.全体の明暗をつける
上記「コツ3.明暗をしっかり見る」に従って、光源に向いた方と反対側を意識して、全体的な明暗を描き込みます。床の上に映り込む影も同時に進めていきます。
4.細部の表情を描き込む
キラリと光るハイライト部は最初から紙の白色を残しておきます。
ペン画は描いた後の修正がしづらいため、しっかり意識してペンを入れないようにします。鉛筆デッサンはそこまで気をつけなくても大丈夫です。描いてしまったら、こまめに練りゴムで白くしておくようにしましょう。
光の届かない暗部は、思い切って黒くします。透明だからという固定観念が強すぎると、黒くしてしまっていいのだろうかと迷う人もいますが、大丈夫です。暗部はあなたが思っている以上に黒く、黒いタイヤのゴムを描いているようなつもりで黒くしましょう。
コップの底や飲み口の部分は、光が屈折や反射を繰り返し、いろいろな表情を見せます。描くのは大変ですが、この部分はガラス製品の魅せ場です。ここをしっかり見て描き込んでおくと、存在感のある作品に仕上がります。
5.全体を整える
ガラスのコップに限らず何でもそうですが、細部を描き進めていくと全体が見えなくなります。ある程度細部を描いた後は、遠くから作品を見て全体を確認しましょう。
目を細めて全体の明暗を確認したり、スマホやデジカメで撮影して画面越しに見るのもいい方法です。
描き進めた部分は強く目に飛び込んできますが、まだ描き込んでいない部分はぼんやりして、白っぽい印象になります。そのため、「3.全体の明暗をつける」の段階で捉えた全体の明暗のバランスが狂ってきます。もう一度全体のバランスを整えましょう。
6.さらに細かい表情を描き込む
全体を整えたら、さらに細部を描き込んでいきます。この時、室内の風景の映り込みを意識して描き込むようにしましょう。
7.全体→細部を繰り返し完成させる
全体を整えたら細部を描く、細部を描いたら全体を整える、これを繰り返していきます。
どこまで描き込んだら完成させるかは、悩ましい問題です。ある程度描き込んで存在感が強くなっていたら、完成としましょう。油絵やアクリルはどんどん上から描き加えていきますが、ペン画や鉛筆デッサンの場合は、ある程度でキリをつけたほうがいい作品になることが多いです。
もう少しここをこうしたい、と描き加え続けていくと、描き込みすぎてかえって完成度が下がることがあります。
受験対策の鉛筆デッサンなら、最初から時間を決めておき、時間がきたら完成とするようにしましょう。特に受験が間近に迫っているような時期ならなおさらです。制限時間内にある程度仕上げる訓練をしておきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
透明なガラスのコップを描くなんて、私も初めは信じられませんでした。しかしコツを知っておくと、豪華絢爛な装飾のついたガラス製品でも、写真のような仕上がりにすることができます。
ガラス製品を描くのは難しそうに思えますが、明暗がはっきりしてるため、コツさえつかんでおけばリアルな表現がすぐにできるようになります。完成したときの充実感も大きいです。この充実感を味わうと、絵をどんどん描きたくなるでしょう。
皆さんも一緒に、充実感を味わいましょう。