デッサンに最適な道具の選び方 鉛筆編
ペン画を描くにしても、油絵やアクリル・水彩など他の技法で絵を描くにしても、その基礎となるデッサンがおろそかでは、満足する絵を描くのは難しいです。
デッサンを練習しよう!と思い立った時、まず必要になるのは鉛筆です。
美大受験で油絵科や彫刻科に行きたい場合は木炭デッサンが主流になりますが、初心者がまず始めてみるには、普段手に持つ機会の多い鉛筆が向いています。
とはいえ、シャープペンシルが主流の現在、鉛筆のメーカーとか特徴とか意識して選んでいる人は少ないです。どれを選んだらいいの?と迷うことも多いでしょう。
この記事では、鉛筆デッサンでよく使われている鉛筆を紹介します。最後まで読んでいただき、あなたにぴったりの鉛筆で画力を向上させ、素敵な絵画生活を満喫しましょう。
Contents
鉛筆の濃さ
鉛筆の濃さは日本産業規格(JIS6006:2020)で決められていて、9Hから6Bまでの17段階あります。Hはハード(硬い)を意味していて、数字が大きくなると色は薄くなります。Bはブラック(黒い)を意味していて、数字が大きくなると黒く、濃くなります。
メーカーによっては規格外の鉛筆も販売されていて、物珍しさから子どもたちが学校で自慢することもあるそうです。
通常の勉強や仕事でしたら、2B〜HBが普通です。しかし鉛筆デッサンをするのであれば、まずは4B〜2Hを用意しておきましょう。
私が受験生時代にデッサンをしていた時は、4B〜2Hでやっていました。デッサンを練習するなら、もう少し幅広く、8B〜3Hが用意してあれば安心です。この範囲で全種類揃えなくても、2B、HB、H、3H〜と1つ飛ばしで用意しておくのもよいでしょう。
私はペン画の下描きなどで鉛筆を使いますが、消しやすさや紙へのダメージを考慮して、柔らかめの2B〜8Bを使うことが多いです。
デッサン向けの鉛筆の選び方
UNI(ユニ)
三菱製、6B〜9Hの17硬度。定番です。
価格が安く、コストパフォーマンスに優れています。受験生など、とにかくたくさん練習したい人にオススメです。
描いてみると、サラサラと描け、描きやすいです。芯が柔らかく、しっかり黒く濃い表現をしたい方にピッタリです。ただし芯が摩耗し丸くなるのも早いため、鉛筆を削る頻度も上がるかもしれません。
HI-UNI(ハイユニ)
三菱製、10B〜10Hの22硬度。
上記ユニの高級版で、黒く、キレイに描ける理想の芯を追及したものです。
UNIと比べると芯が少し硬めとも言われていますが、実際に描いてみると、その違いは微妙でした。UNIよりも描き味が滑らかで、硬さの違いは感じにくいかも知れません。そのため、筆圧が弱い人でも非常に描きやすい鉛筆です。
金のラインが入っていて高級感があり、手に取りたくなります。中〜上級者向けとなっていますが、初心者が試してみても問題ありません。
高級版という位置付けのため、値段は少々高めになります。
MONO
トンボ鉛筆製、6B〜6Hの14硬度。
MONOというと、消しゴムを思い浮かべる方も多いかと思います。トンボ鉛筆の超微粒子化技術を結晶化した高密度構造を採用していて、なめらかかつ濃く描くことができ、しっかり紙に定着し、芯も折れにくくなっています。
実際に描いてみると、ユニのような柔らかさではなく、ハイユニの滑らかさと似た描き心地でした。
初心者の方が使っても全く問題はありませんが、こちらもやはり高級品ですので、買い揃えるにはちょっと勇気が必要です。
STAEDTLER(ステッドラー)ルモグラフ
ドイツの世界的筆記具メーカー、ステッドラーより発売されているルモグラフという製品です。12B〜10Hの24硬度です。(24って、すごすぎます)
なんと、1662年ごろにフリードリヒ・シュテットラーさんが鉛筆を発明したと言われています。江戸幕府が武家諸法度を制定したのが1663年(日本史)と言われていますから、すごいことです。
画像の鉛筆・ルモグラフの開発年ではないですよ、鉛筆の発明です。念のため。
紙への定着に優れていて、均一な線が描け、折れにくく摩耗も少ないという特徴があります。デザイナーやクリエイターなどプロフェッショナルに愛好家が多いです。
実際に描いてみると、UNIやMONOに比べて芯がかたく、デッサンをする時の硬度のチョイスも変わってきます。私はステッドラーの2Bは、UNIのHBくらいのつもりで使っています。
CASTELL 9000(カステル9000)
ドイツの老舗メーカー、FABER CASTELL(ファーバーカステル)の製品です。8B〜6Hの16硬度です。
カスパー・ファーバーさんが鉛筆の製造を1761年から始めたのが、ファーバーカステルの歴史の始まりだそうです。ちなみに、ルソーが社会契約論を刊行したのが1762年です。(世界史)
六角形鉛筆の長さ・太さ・硬度の世界共通基準は1851年にローター・フォン・ファーバーさんにより決められました。そして1905年に、画像の製品であるカステル9000を発売し、世界中で有名な鉛筆となりました。
実際に描いてみるとかなり硬めです。個人的には、前述のステッドラーよりも硬めに感じました。芯が折れにくいので、筆圧が高くてガンガン描く人に向いています。
250年以上の老舗だけあって、描き味はなめらかでノリもよく、紙面への定着性も1番です。高級品です。
濃い暗部を表現するのは他の鉛筆よりも手間がかかりますが、微妙なグレーの諧調を綺麗に表現するのに向いています。
私は受験生時代、そんな知識は全くなく、普通の鉛筆と同じだと思ってガンガン使ってデッサンしていました。
こんな歴史的な鉛筆を・・・。無知とは恐ろしいものです。
受験に必要な道具は、最初に先生がチョイスしてくれたのですが、その中にこの鉛筆も入っていました。ユニにするという選択肢もあったと思いますが、なぜファーバーカステルを選んでくれたのかは謎です。
結局、何を選んだらいいか
私個人の感想ですが、おすすめはハイユニとMONOです。ただし、ペン画家としての使い方をするなら、です。
私がペン画を描くとき、鉛筆で下描きしてペンを入れ、最後に下描きの線を消します。消しやすくて紙へのダメージの少ない硬さ、滑らかさを求めると、ハイユニとMONOが同点ベストです。
柔らかいユニの方が紙へのダメージも少ないのですが、こちらは柔らかすぎてすぐに芯が丸くなってしまい、細密表現には向かない気がします。
ハイユニとMONO、どちらがいいの?と思う方もいるでしょう。
それは個人の好みです。どちらも大変優れた鉛筆です。描き味、値段、デザイン、含めて好きな方を選びましょう。
ペン画の下描きでなく鉛筆デッサンとしての使い方なら、ステッドラーやファーバーカステルを選びます。グレーの微妙な諧調の変化は、ドイツ製の鉛筆たちの方がキレイに表現できます。定着性も一段上ですね。
芯が硬めですが、強めの筆圧でガンガン描いても芯が折れにくいので、その点でもデッサン向きかと思います。
学生さんや駆け出しのアーティストさんなど、少しでも経費を節約したい方はユニです。安くても品質の高い、コスパに優れた一品です。デッサン初心者の方で、何から試したらいいか分からないという方は、とりあえずユニの4B〜2Hを買い揃えて試してみると良いでしょう。
買ってきたら、削らないと使えません。デッサン用の削り方は独特です。この記事を参考にしてください。
デッサンに慣れてきたら、色々なブランドを試してみたり、濃さによってブランドを変えるというのも良いでしょう。描き始めの全体像をとらえる段階では柔らかめのユニでふんわりと形をつくり、ある程度描き込んだら先端を尖らせた硬めのファーバーカステルやステッドラーでカリカリ細部を表現する、そんな感じです。
まとめ
いかがでしたか?
鉛筆なんてどれも同じ、と思いやすいですが、メーカーごとに特徴があります。これはいい鉛筆、悪い鉛筆というわけではありません。色々試してみることで、あなたに向いている鉛筆か向いていない鉛筆か分かります。
自分にぴったりな鉛筆を見つけて絵の技術を上達させ、楽しく充実した生活を送りましょう。