ペン画:輪郭線はどうする?
みなさん、絵を描くとき、輪郭線はどうしますか?
ペン画初心者の方は、輪郭線を描いた方がいいのか、描かないほうがいいのか、迷う方もいるでしょう。
今回は絵を描くうえでの基本中の基本、輪郭線について考えてみます。この記事を最後まで見ていただき、あなたにぴったりの輪郭線の使い方を見つけましょう。
輪郭線とは
子ども達がエンピツやクレヨンを持って絵を描くとき、輪郭線から描き始めます。
(7歳の作品)
みなさんも、当たり前のように輪郭線を描くのではないでしょうか。
なかには、「輪郭線を描きません」という技法の方もいっらしゃるかもしれません。実際、現実世界には、輪郭線は存在しません。明暗、色彩、影の存在、トーンなどで境界を認識しています。
写実的な表現を突き詰めて作品を描いている方は、輪郭線を描かないで表現している方が多いですね。
ホキ美術館に行くと、写真よりも写実的な作品が見応えがあります。当然輪郭線はありません。
輪郭線の歴史
人類最古の絵とされるラスコーの壁画には、輪郭線があります。古代エジプトの、パピルスに描かれた絵を見ても、輪郭線はあります。
時代を経て、ベラスケスやゴヤに代表される宮廷画家が活躍していた頃では、貴族の肖像画や宗教的、アカデミックな絵画が描かれていました。輪郭線のない写実的な表現が中心でした。
19世紀、ヨーロッパの若い画家達に強烈な影響を与え、印象派の元ともなった安藤広重や葛飾北斎の浮世絵は、しっかりとした輪郭線があります。ですがマネやモネ、ルノワール、ゴッホといった印象派の有名な作品は、輪郭線はないものが多いですね。
印象派の影響を強く受け、フォーヴィスムを確立させたとされるマチスの作品は、輪郭線が見られます。
輪郭線はあったりなかったりさまざまですね。初心者のうちは、輪郭線はあるものとして考えた方が、絵を描く上では都合が良いことが多いです。
ペンを使って絵を描く場合はなおさらです。ペンは、輪郭線を表現するのに最も適した素材です。
ただし、美大受験のためのデッサンでは、輪郭線に頼らず面の表情や陰影で境界を表現するを練習した方が、合格に近づきます。
頑張れ、受験生!
単純な輪郭線を試してみよう
それでは、まずは単純な図形で輪郭線を描いてみましょう。
均一な濃さ・太さの線で、対象物をそのまま囲んでいます。最も単純で基本的な輪郭線です。
絵画作品としては、ちょっと寂しいですね。
輪郭線に付け足してみよう
では、輪郭線に少しだけ付け足してみましょう。植物の葉を描いた輪郭線に・・・。
葉脈を付け加えてみます。
かなり表情が出てきました。全て同じ太さの線ですが、少し足すだけで、かなり面白みのある絵になります。
輪郭線を強調してみよう
では次の段階として、線の一部を強調してみます。外側だけ描かれたアサガオの葉ですが・・・。
葉脈の線を付け足し、右側と下側を太くしてみます。
葉脈を付け足すだけでも表情が増すのですが、さらに立体的になり、画面が活発的になってきました。
今回は右側と下側を強調しましたが、決まったルールはありません。描く人の感性、観察力、訓練具合により、自由に強調してみましょう。
輪郭線を省略してみよう
強調の反対は省略です。同じ太さで外側だけ描かれたヤツデの葉ですが・・・。
まずは線の付け足しと強調です。今回は、線の交点に当たる部分も強調しています。
さらに、強調した部分の反対側を細く、一部かすれさせることで、弱めてみます。
表情が豊かになっただけでなく、精密に、写実的になりました。
ただしペン画では、一度描いた線を砂消しゴムなどで消すことはあまりおすすめできません。最終的な完成形を予想し、初めから細め・かすれ気味に描く必要があります。
また、よくレタリングで使われる技法で、文字の輪郭線を全て描くのは普通ですが・・・。
一部を省略させると、脳が勝手に省略させた部分を認識し、文字が浮き出て見えるようになります。
長く、完全な輪郭線でも作品になり得ますが、一部を省略させることで、面白みのある絵画的な効果をあげることができます。
まとめ
輪郭線は、ただ外周を囲むだけでないことがお分かりいただけたでしょうか。
ハッチングやクロスハッチ、陰影の表現に慣れていなくても、輪郭線だけでも作品を制作することができます。
もちろん、陰影があった方が表現の幅も広がります。ですが、この輪郭線だけで表現する経験を積んでおくと、少ない線で、正確に表現する練習になります。
輪郭線を練習し、ある程度慣れたら陰影をつける練習をし、その後もう一度輪郭線の練習に戻ると、複雑で難しそうな題材でも、輪郭線だけで綺麗に表現できるようになります。
ぜひ試してみてください。ただし、美大を目指している方がデッサンをするときは、輪郭線に頼らないようにしましょう。