簡単に始めるペン画:陰影の描き方
陰影を描く前に知っておきたい基本
線の描き方
陰影を描くには、線を描く必要があります。下記リンクを参考にして、ペン画を描くときの姿勢や力の入れ方、お気にりのペンについて分かったうえで、思うような線が描けるようになるまで練習しておきましょう。
陰影とは
ペンは筆とは違い、塗るという作業はありません。線を描く(または点を打つ)作業です。
黒インクを使用した時、紙の上に表現できる色は当然「白」と「黒」のみとなります。
しかし実際に絵にしようとしたら、これでは困ります。中間色のグレーも必要になります。
ペン画では、グレーを表現するには、線の疎密で表現することが一般的です。インクそのものの色でグレーを表現することもできますが、いろいろな濃さのグレーインクを用意しておくのは手間がかかるため、現実的ではありません。
キレイなグラデーションの階調も、近づいてよく見れば、実は黒一色です。黒の粗密によって薄いグレーに見えたり、濃いグレーにな見えたりします。
これは他の技法(油彩、水彩等)にはない、ペンがならではの特徴です。
陰影の練習方法
陰影を表現するには、3つの方法があります。
- 線(ハッチング)の間隔を変える
- 向きの違う線を重ねる
- 線の太さを変える
この3つを組み合わせて表現することも多いです。
①ハッチングの間隔を変える
ハッチングする時に、線の間隔を狭くすればするほど、濃いグレーに近づいてきます。
このテクニックだけでも、十分見応えのあるペン画の作品に仕上げることができます。
私がペン画を描く場合、クロスハッチもたまに使いますが、1方向のみの線の疎密で表現することが多いです。
2019年に描いた以下の作品。赤枠部を拡大すると・・・。
1方向のハッチングだけで、このような表現も可能です。
「このように描かないとといけません」というわけではありません。ペン画の書き方は自由です。いろいろ試してみて、面白そうな表現が見つかったら、どんどん取り入れていきましょう。
②向きの違う線を重ねる
縦と横、斜めなど、複数の方向のハッチングを重ねる技能です。クロスハッチと呼ばれていて、ペン画ではよく使われる技能です。
縦と横のクロスハッチ
斜めのクロスハッチ
3方向のクロスハッチ
4方向のクロスハッチ
クロスハッチの向きは、90度や45度でなくても構いません。いろいろな角度のクロスハッチを試してみると、見た目が変わって面白いですよ。
③線の太さを変える
同じ間隔で線を描いても、太いペンを使えば、濃いグレーになります。
下図左は丸ペン、右はGペン、どちらも同じ1ミリ間隔で線を描いています。
ハッチングを重ねていけば濃いグレーに近づいていきますが、それでは時間も手間もかかります。最初から太いペンを使えば、時間も手間も節約できます。
実際、ペン画を描く人は、複数の太さのペンを使い分けて描く人は多いです。
また、Gペンなどのつけペンの場合、筆圧によって太さが変わるため、ペン先を変えなくても太い線を描くことができます。
ハッチングをつなげ方
広い面に線を描いてグレーを表現するには、1本の線を長くするか、短い線をつなぎ合わせる必要があります。
より一般的な技法は、線をつなぎ合わせる方法です。
線のつなぎ目が目立つと気にする人もいますが、気にする必要はありません。それがペン画の特徴、面白さの一つです。
ですが一応、目立たなくする方法は、あるにはあります。
- ペンの入りと抜きが無理なく自然にできるよう、練習を積む。
- ペン先が潰れたり傷んでいないか確認する。
→もしそうなっていたら、新しいペンに交換する。 - つけペンの場合、インクが濃すぎたり薄すぎないか確認する。
→水を足す、蓋を開けてしばらく放置して蒸発させる等して調節する。 - つけペンの場合、インクをつけすぎていないか確認する。
→インクのつけすぎはダマの原因になり、ペンの入りが濃くなり、つなぎ目が目立つようになります。 - 油性ボールペンを使用している場合。
→他のペンを試してみる。油性ボールペンはインクの性質上、ダマができやすいです。
でも、つなぎ目が見えるのはペン画らしくていいですよ。どうしても嫌な人は、ペン画でなく他の技能に切り替えた方が早いです。
グラデーションの作り方
陰影に慣れてきたら、グラデーションを描く練習をしましょう。
まずは鉛筆で枠を作り、最初と最後の濃さを決めます。その後、中間グレーを順番に描いていきます。
クロスハッチを使ってもいいでしょう。
最初はこのように段階を分けていきますが、慣れてきたら段階のない、滑らかなグラデーションに挑戦してみましょう。
風景にしろ、ネコさんやうさぎさんや人物にしろ、現実世界のグラデーションは段差のない滑らかなものです。最初は難しく感じますが、練習すれば大丈夫です。
描いている途中、どうしたらいいか迷ったら、少し離れ、目を細めて見るようにしてください。まだペン入れが足りなくて薄いところが見えてきますので、再び目を近づけて描き込みましょう。
おわりに
今回解説した陰影のつけ方は、できるようになると表現の幅が格段に広くなります。作品も見違えるように完成度が上がり、見た人から「上手だねえ〜!」「上手になったねえ〜!」と言われるようになるでしょう。
具象的な表現を突き詰めたい方にはもちろん必須な技術です。抽象的な絵を描きたい人、インスピレーション的な絵を描きたい人、イラストを描きたい人、漫画を描きたい人、こういった人もみなさん必要になってきます。
最初は難しく感じますが、段階を順に練習して身につけ、楽しいペン画ライフを送りましょう。