冬物語 〜受験対策〜
アトリエ松竹梅物語、受験対策開始となります。
受験生時代に好きだった漫画に、原秀則先生の「冬物語」(ヤングサンデー)があります。その題名をパクリつけさせていただきました。
やり始めてその難しさを実感することってありますよね。今回はそんな感じです。
美大受験予備校
美大・芸大に行きたいと思った私は、美術部の友人たちとも相談し、予備校(受験指導をしてくれる、画材屋でやっていた絵画教室)に申し込みに行きました。
するとそこには、たまたま高校の美術の先生がいました。
「おう、やるのか、まあがんばれよ」
くらいの、軽いノリだったのを覚えています。
先生は、この時だけでなく全てにおいて軽いノリでした。高校の先生とはいえ、正式採用でなく非常勤講師だったこともあるかも知れません。
それでも、画家として十分成果を出されていた重鎮ですから、いろいろな苦労があるのは当然。そういうことはおくびにも出さず、常にひょうひょうとしていました。
「自分は頑張っているんだぞ」
「こんなに苦労しているんだそ」
というノリもありだとは思いますが、私はそうではなく、
「プロなら頑張って当たり前、それを表に出して美談にはしたくない」
というノリの方が好きです。
頑張ってるぞアピールが間違っているということではありません。単に私の好き・嫌いです。
申し込むにあたり、油絵で受験するかデザインで受験するか、コース選択がありましたが、自分はデザインで申し込みました。
正確には絵を描くこととデザインすることは違う作業ですが、まだよく分かっていない私はそこまで考えていませんでした。何となく、デザインの方が合っていると思ったのです。
受験対策開始
申し込んだその場で、デッサン用の道具一式と、平面構成の道具一式を購入するよう言われました。平面構成の道具は、アクリルではなくポスターカラーでした。
カッターナイフを使って鉛筆を削っておくよう指示を受け、慣れない手つきで削っていると、
「鉛筆も削れないのか」と呆れ顔。
そんなこと言ったって、今までの人生で鉛筆削りしか使っていないし、さらにもう時代は鉛筆ではなくシャープペンシルになっているし。
この時初めて知りましたが、絵を描く人は、鉛筆はこう削ります。
絵を描かない人には、全く無縁の削り方です。こんな風に削ります。
鉛筆の削り方の指導を受け、最初の課題は、マス目を切ってグラデーションを鉛筆で描くというものでした。
こんな感じ。
なるほど、グラデーションは基本だと思い、真剣に取り組みました。
静物デッサン開始
グラデーション課題を見せたところ、特に可も不可もなくスルーされ、すぐに静物デッサンが始まりました。もうちょっと何かアドバイスとか意見とかあるかと思っていた私は拍子抜け。
まあこんなものかと気を取り直し、静物デッサンに取りかかりました。
鉛筆の持ち方も、字を書く時の持ち方とは違います。絵を描く時の持ち方の指導を受けました。はい、素人ですから。
先生はたまに巡回し、後ろから見ながら、何やらアドバイスらしき発言をしています。私も受けましたが「部分だけで見るな、全体を見ろ」的なアドバイスだったかと思います。
ただ当時の私には、全く意味がわかりませんでした。始めはそんなものです。。
今現在、絵が上手くならなくて悩んでいる方、
悩まなくていい、それが普通ですよ。
初めから上手い人なんて、ほんの一握りの天才です。今売れている有名な画家の方も、最初はこんな感じの方がほとんどだと思います。
現在、ペン画家としてこういう絵を描いていますが、
特別な才能があるわけではありません。単純に、努力の積み重ねです。
講評会
2時間くらいかけて描いたのち、全員の作品を並べて講評会(批評会)が始まりました。
これは受験対策のあるあるです。結構なプレッシャーです。
私としては、素人なりに能力を全て注ぎ込んで傑作を描いたつもりでしたが、周りの人たちと比べると
「あれ?」って感じでした。
みんな、上手い・・。
どこがどう違うのか、具体的な点は当時の私にはよく分かりませんでしたが、何となく自分が井の中の蛙だったということが実感できました。
ただし、先生はみんなの絵を見て「どいつもこいつも下手くそだ。これじゃみんな不合格だ」という感じの言葉でした。美大・芸大受験の難しさを実感しました。
「無理なんじゃないか?」
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